闘う者達


5:古代種の神殿

 
『私は……まだ、生きてる……』

 総務部調査課“タークス”を統括する男の言葉が、回線を通して神羅本社にいる
リーブの耳に届く。
 何故だろう? その言葉に何かを感じた。語に尽くしがたい感情を抱く。

「君の代わりならいくらでもいるんだよ? やる気が無いのならこのプロジェクトから降りたまえ」

 何故だろう? 最近よくあの頃を思い出す。元上司の罵声と共に甦る記憶。
 なぜ今になって……。
 しばしの間、リーブの思考は時を止めた。

 ケット・シーからもたらされた音声によって、止まっていた思考は再び動き出した。
声の主はクラウドだ。
『あいつら、命を投げ出して黒マテリアを手に入れるくらいなんでもない。
この場所はもう安全じゃないんだ』
 ――彼らの話によると、どうやら黒マテリアを持ち出すには、一人が神殿内に残り
パズルを解く必要があるらしい。内側から神殿のパズルを解くと、最後は黒マテリア
の中に閉じこめられる仕掛け。いわばセトラの残した太古のセキュリティシステムだ。
 リーブは無意識のうちに回線を繋いでいた。
ケット・シーを通してクラウドに呼び掛ける。
「この作りモンの体、星の未来のために使わせてもらいましょ」
 臆することはない。ケット・シーは量産型ロボットだ。……代替はいくらでもある。

 心情的な後ろめたさへの贖罪行為、さらに黒マテリア確保と言う戦略的な判断
……どちらにせよ、それが今執れる最善の策だった。
 躊躇するクラウドを説得し、ケット・シーを操縦して神殿奥へと向かう。
「スパイのボクのこと信じてくれて、おおきに! ……ほな、行ってきます」

『がんばって、ケット・シー!』

 かけられたエアリスの言葉が、彼に道を示した。
6:最終決戦
 
そうか……。そう言うことだったのか。
 今更ではあるが、リーブは探し続けていた“答え”に出会ったような到達感、
あるいは充足感を感じていた。

 ――君の代わりならいくらでもいるんだよ?
 「この同じボディのが ようさんおるんやけど このボクは、ボクだけなんや!」
 ――やる気が無いのならこのプロジェクトから降りたまえ
 「ほな、行きますわ! しっかりこの星を救うんやでー!」

 そう。自分と同じ“人”は何人もいる。
 けれど、“自分”にしか出来ないことがある。
 それは、部署も組織も、立場や年齢も関係ない。
 クラウド達は――彼らは、それを知っていた。
 自分の持っていなかった、あるいは忘れてしまった物を。

 最後まで、彼らについて行こうと決心した瞬間だった。
 たとえ、今度は神羅を裏切るスパイになったとしても。

「すんませんけど、この作りモンのボディで頑張らせてもらいます」

 リーブは普通のサラリーマンで、体力や戦術面で彼らにかなう筈はない。
ましてやセフィロスになど生身の自分では一太刀を浴びせる事も叶わないだろう
 ならば。

 自分の出来る闘い方で――星を救ってみせようじゃないか。
 この“相棒”と共に。


 
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