カシム(本スレ486さん)

よう、そこの君。辛気くさい顔してないで酒でも一杯どうだ?
ん?お前誰か、だって?
ああ、すまない。紹介が遅れたな。今日試合に参加している『カシム』という者だ
何?そんなやつは知らないってか?
そうか・・・まあなぁ、私もマイナーな役回りなんでね。

じゃあ改めて。私はカシム。転職を司るダーマの大神官を護衛する親衛隊長さ
大神官様は、ひょっとしたら君も名前くらいは知ってるかもな。フォズって子だ
前のトーナメントに出てて、その後もマリベルと会場で何か色々話をしておられた
にしてもあの子、あんな性格だったっけか?・・・ま、いいんだけどさ
まあ神殿ってのは娯楽の少ない所だからな。普段にはない経験が出来て楽しかったんだろう
あの場に参加できて本当に嬉しそうな顔をしていたよ
ありがとう。彼女に仕える者としてここの人たちには礼を言わせてもらうよ

さて、私のことだが・・・どうもな、も一つ評判がよいのかよくないのか
『戦闘中に様子見なんかしてんじゃねえぞコラ』などと
画面の向こう(?)から愚痴られた覚えがある。
別に怠けてるわけじゃないぞ?相手の隙をうかがって攻めるのが戦士の鉄則というもの
・・・なんだけどなぁ。どうも無駄な動きと思われてしまうらしい。・・・チッ
それから妙に悪人扱いされることもあるんだな、私は。胡散臭いだの何だのと
性格もあって、まあそれはわかるんだが、たまに名前がいけないなんて言われたりする
・・・確か、おとぎ話に出てくる盗賊絡みのヤツとおんなじ名前だっていうんだが
んなこと知らないぞ。私が自分でつけたんじゃないんだからさ。この名前

あと、私のことで言うことってあったかなぁ・・・
なにぃ?『一番肝心な自分の体型のことが抜けてるぜ』だとぅ?
・・・ああそうさ。見ての通り私は短足だ。ああ短足さ!  
余計なお世話だっての。ほっといてくれ

ははは、ロクなのないな。まあな。人に色々言われるのもしょうがないってところか
わかっちゃいるさ。何しろ私は一度はダーマを、あの子を守ってやれなかったんだからな
それで偉そうに親衛隊だってか?笑ってしまうよな

あの時はショックだったな。これでも神殿の親衛隊に選ばれるってのは結構大変でね
それに選任されたときは喜びに打ち震えたもんだ。私もエリートの一員だ!・・・てな
だからそれなりに力量にも自信があったのさ。一応、その時は
だけどそんなもの、魔物の前では所詮『井の中の蛙』。『単なる自信過剰の馬鹿野郎』
それが身にしみるほどにわかった。恥ずかしいことに逃げることしか出来なかった
おまけに情けないことに立ち直るのにもちょいと時間がかかってな
殺伐とした吹き溜まりの町の酒場で酒をかっくらっていたりしたものだ
心が荒んでいく、っていうのはああいう時のことをいうのだろうか?
不味い酒だったな・・・あれは。あの不愉快な味は忘れられん

ま、そんなわけで人にとやかく言われる節なんて山ほどある
今さら正義の味方にはなれんさ。
ちょいと前は気取って色々カッコつけてみたりもしたが・・・どうもサマにはならん
それは、ま、あれの長さもあるしな・・・うるさい。そこ、人の足見て笑うんじゃない
結局私は私だ。どう考えてもヒーローって柄じゃあるまい
賞賛はいらない。そんなものを受けるに値するような男でもないことはとうに承知だ
私は勇者には、英雄にはなれん。・・・だから、私は戦士になる
この目に映るモノを守る戦士に・・・今度こそ、私はなってみせる

幸いなことだよな。私にはまだ守れるものがある
あの少年達が、フォズ大神官を救い、ダーマを奪還に協力してくれたおかげだ
私には再びチャンスが与えられたんだ。
一度悔しい思いをしたんだ・・・あの苦痛は忘れない
辛いのなら、苦しいのなら、同じ手は二度とくわんさ。
今度こそ私は神殿を守る。それがあの戦いで死んだ人々への、せめてもの償い
嘆いたって、過ぎ去った時も死んだ命も還ってはこない。なら私にできるのはそれだけさ
私には戦うことしかできない。ならば、精一杯戦ってやる。この身を粉にしてでも、だ

それに、もう一人・・・私には守る者が出来た。
ネリスという名の、あの吹き溜まりの町で出会った女がいてね
のろけかもしれんが、正直惚れたよ。
あいつに出会えたお陰で私は私を取り戻せた・・・少なくとも
酒場やスラムをふらつく嫌な自分から離れることが出来たんじゃないかと思ってる。
でもダーマの戦いで色々あってな。あいつ、体が弱いってのに魂まで酷使してしまって
今もベッドで寝たままになってる時の方が多い
だが、せっかく生き残れたんだ。まだ暗い顔をしているが
いつか笑わせてやるさ。いつになるかわからんが。いつか、必ずな
酒と女は泣きながら愛でるものじゃない。晴れやかな笑顔こそ似合いってものだろ。

今さら恥も外聞も気にしちゃいない。己の仕事に手段は問わない
精一杯やるだけやって・・・私は私のすべき務めを果たすだけさ
それで上手い酒でも飲めたら、それでいいさ。あの神殿で、あいつのそばでな

それが、プロってものだろう?

 

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