溶岩の渦巻く熱く焼けた世界を抜けて、いかにも「宝の番人」
という顔をした魔物たちを打ち倒して、私たちは神殿らしき
場所に立っていた。まがまがしい神への祈りを、彼らがここで
行なうのでしょうね。
 そこにあったのは、邪な波動を感じる像。魔物たちが
「炎の聖堂をけがすふとどき者め!
 悪霊の神々にささげるいけにえにしてやるう!!」
と叫んでいたから、悪霊の神を象ったものだと思う。
 でも、これを持ってしまったら自分の何かが変わってしまい
そうな気がする。変な気配が残っているのよ。
「ね、ねえ、それ、持つの嫌だな」
「確かにあまり持ちたくない雰囲気があるね」
王子たちはふたりで声をひそめて話している。でも、これが
なかったら、ハーゴンを倒す事はできないのよね?
「どうしようか」
「どうしようね」
 ………………。
「もおおおおお! 私が持って行くからいいわよ!」
 私は勇気を振り絞って像へと手を伸ばし、しっかりとそれを
掴んだ。ずんっと身体の奥まで何かが走り抜けて行く。
「う……ぅぅ」
 身体の奥から、うなり声が出て来てしまう。嫌だ、これって、
まさか、もう嫌だ!
「ちょ、ちょっと」
 視界が歪む。身体が、身体が歪んで……縮んで、いる?
「ちょっと、しっかりして!」
 ローレシア王子が私を抱きとめてくれて、サマルトリア王子は
何か呪文を唱え始めていた。あれは、ホイミ?
「ホイミ!」
 サマルトリア王子の詠唱が終わって、私は身体が自由になった
ことを感じた。どこも、もうどうにもなっていない?
「大丈夫?」
 ホイミは聖なる呪文だから、私を助けてくれたのね。
「大丈夫みたい……ありがとう」
 私はふたりにお礼を言って、ローレシア王子から離れた。
少し顔が紅くなってしまっているかもしれない。
「今………犬になりかかってたよ」
「えええ??」
「身体の中に、まだ呪いが残っていたんだね……」
ふたりのため息を聞きながら、私は自分の中に新たな怒りが
わいて来たのを知った。
 許さないわよ、ハーゴン! うら若き乙女をいつまでも簡単に
犬の姿に戻せるようにしてるなんて!
 私、絶対に許さないわっっ!!!

 早足で洞窟を戻りながら、ちょっとだけ間の抜けた事を思った。
 ……犬になってしまったら、また裸になってしまっていたのかしら? って。
 装備がもったいなかったわね、危ない危ないー。

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