中原中也「骨」――詩集「在りし日の歌」より | |
ホラホラ、これが僕の骨だ、 生きてゐた時の苦労にみちた あのけがらはしい肉を破つて、 しらじらと雨に洗はれ ヌックと出た、骨の尖。 それは光沢もない、 ただいたづらにしらじらと、 雨を吸収する、 風に吹かれる、 幾分空を反映する。 生きてゐた時に、 これが食堂の雑踏の中に、 坐つてゐたこともある、 みつばのおしたしを食つたこともある、 と思へばなんとも可笑しい。 ホラホラ、これが僕の骨―― 見てゐるのは僕? 可笑しなことだ。 霊魂はあとに残つて、 また骨の処にやつて来て、 見てゐるのかしら? 故郷の小川のへりに、 半ばは枯れた草に立つて 見てゐるのは、――僕? 恰度立札ほどの高さに、 骨はしらじらととんがつてゐる。 |
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(本スレ504さん、ありがとうございます) *中原中也は亡くなってから50年経過していますので、掲載に支障ありません。 |
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